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撮影レポート 『階段下は××する場所である』

一体いつぶりかわからない2日連続投稿です。

昨日アップした記事にも書きましたが、9/11から監督作『階段下は××する場所である』が公開されます。

予告編

公式サイト:https://kaidan-shita.jimdosite.com/
公式ツイッター:https://twitter.com/kaidanshitahaxx

そこで公開にあたって、撮影日誌を自分で書き起こすことにしました。
撮影完了が2019年のことですので、ちょっと記憶が朧なところもありますが覚えている範囲で。

■企画開始


企画を始めたのは2017年のことでした。
前作『11月19日』が完パケし次作の企画を始めようと思ったのが確か7月か8月ごろのことでした。

前作『11月19日』


私は以前から『氷菓』というアニメ作品(原作米澤穂信先生)が好きで、こういうライトミステリーと青春ものが混ざったようなものが作りたいとずっと考えていました。

ちょうどその頃個人的な興味でひたすら「小説家になろう」に投稿されている、非なろう系作品(異世界転生しないし、ファンタジー要素もない)のマイナージャンルを読み漁っており、特にジャンル投稿数が非常に少ない推理ジャンルの作品を片っ端から読んでいました。
そんな中、私は羽野ゆず氏が投稿されていた『階段下は××する場所である』に非常に興味を持ちました。
『階段下ー』は私の求めていた、学園青春ものでラブコメでライトミステリーの要素も持ち合わせる作品で、ただ読んで面白かったではなく「この作品を映像化したい…」と当然の帰結として思うようになりました。

共同制作している兄に『階段下ー』見せたところ「面白い」と意見が一致し、ちょっとドキドキしながら「映像化させてもらえませんか?」というメッセージを送ることにしました。
羽野さんはあまりに唐突な依頼に戸惑っていらしたようでしたが、原作許可については「ご自由にどうぞ」ということであっさりと快諾してくださいました。

■制作開始〜クランクイン

「この世で最も辛い作業は何か?」と問われたら私は迷うことなく「映像作品の制作です」と答えます。

それぐらい映像のプリプロダクションは長くてしんどくて面倒くさいです。

まず、ロケ地の選定にあたってイメージしたのは雪国でした。
原作者の羽野さんは北海道・札幌を舞台にして作品を書かれていましたが、北海道ロケは自分の活動範囲内から遠すぎるので、東北地方とすることにしました。

ここで前作『11月19日』で得た経験とツテが活きました。
東北といったらまずはここということで、『11月19日』でお世話になった山形に話を持っていくとすぐに前向きに撮影に対する協力を検討をしてくれました。
いやあ、これが本当にありがたくて。
ロケーションは映像作の最大の肝なので、ここがどうにもならないと先に進めないです。

今回も制作プロデューサーとして佐藤哲哉さんが関わってくれ、また山形フィルムコミッションの山川さんと新庄フィルムコミッションの関さんお二方にも大いにお世話になりました。

並行して2017年の10月ごろから脚色作業を開始しました。
この作業が結構大変で、今までオリジナル脚本しか手がけたことがなかったため「原作あるしそんな大変じゃないでしょ…」とか思っていたのが大きな間違いでした。

原作は大量のセリフがあるためそれをそのままやろうとすると、映像として成立しなくなってしまいます。
かといって刈り取りすぎると、原作の良さまで消してしまいます。
また、『階段下ー』はキャラクターがかなりアニメチックに描写されていますのでそのまま生身の人間に演じさせるとただの痛い人になってしまいそうという懸念がありました。
こちらも同様で、完全に抑えた芝居で…リアリスティックなキャラを…とかに改変するとそれもまた良さを消してしまうためそこの塩梅を考えるのが中々大変でした。

さらに、脚色しつつコンテに起こす準備作業をしていた時に映像で見せるとトリックに矛盾が起きてしまう箇所を発見してしまい、原作の羽野さんにアイデア出しをしてもらいながら試行錯誤を繰り返して脚本がある程度形になったのは2018年の初頭のことでした。

脚本が完成した後、企画書とともに提出しより具体的な話、ロケ地の選定とスケジュール作成を開始。
ロケハンに行きつつ、スタッフィングやキャスティングが決まったのは確か2018年6月ごろのことだったと思います。

ロケハンの様子。写真は新庄フィルムコミッション関さん
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手前・筆者の兄。奥・佐藤哲哉さん(プロデューサー)
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2回目のロケハン。
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3回目のロケハン。
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『階段下ー』は晩夏、晩秋、晩冬の3つの季節に跨った短編・中編で構成されていますので、撮影も3回に分けて季節を追いながら実施しました。なのでロケハンも3回やっています。

■制作開始〜クランクイン

クランクインしたのは2018年の9月のことでした。
1本目の『階段下は××する場所である』は想定尺が30分を超えており、4日は撮影に必要な見積もりでしたが場所の都合でどうにもならなかったため気合いで3日で撮り切りました。
毎日早朝から夜まで軽く10時間は撮影していたと思います。
立ち会いしてくださった、学校の先生には本当に申し訳無かったです。
段取り→撮影→段取り→撮影→段取り→撮影→を延々と繰り替えすため食事をしている余裕もなく、撮影3日目には軽い脱水症状になっていました。どんなに忙しくても、昼はちゃんと食べないと体が持たないというのが良くわかりました。
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2本目の『心当たりのあるモノは』は2018年の11月に撮影しました。
『心当たりー』は図書館という限定シュチュエーションのため、撮影可能なのが書庫整理で閉館している日にちのみとなり、撮影自体は3日確保していましたが全尺の7割を1日で撮りきるとんでもないハードスケジュールになりました。
この時には3分半でロケ弁を食べきれる能力を身につけていたため、脱水症状にはならなくてすみました。
撮影にあたって、山形私立図書館の職員さんが朝から晩まで付き合ってくださり本当に申し訳なかったです。

3本目の『戻るには遅すぎる』は2019年の3月に撮影しました。
『戻るにはー』は原作の複数エピソードを組み合わせて脚色したため、シュチュエーションの限定される他の2本とは大きく異なり、外ロケが中心となりました。
屋外ロケは座ってられないので辛いですが、スケジュール的に余裕があったのと色んな景色が見られるので、楽しかったといっても嘘にはならないと思っています。
撮影は3日間でしたが、日があるうちに終わってスタッフと食事行く時間があったくらいでした。(最終日以外)

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■ポストプロダクション


撮影が終わったらポストプロダクションです。
私は編集を全部自分でやるのですが、『階段下ー』は膨大なセンテンスを膨大なセンテンスで強引に迎え撃つため、カット数がかなり多いです。
インディーズは結構ワンカットの長回しを多用する方が多いのですが、とにかく編集が大変でした。
前作の『11月19日』は84分で『階段下ー』は91分とそれほど尺に差はないのですが、かつて経験の無いような細切れカットと止め絵を多用する特殊な演出を加えたため、特に1話目の『階段下は××する場所である』が大変でした。

カットがある程度決まったら、カラーグレーディングをします。
今回グレーディング用に「DaVinci Resolve 」を導入しましたが、前から使っている「premiere pro」の lumetri機能が普通に使えたため結局使いませんでした。
グレーディングもだいたい自分でやり、その後撮影部を呼んで直しをしてもらいました。

グレーディングが終わったら、整音用のオフラインファイルを書き出して整音マンに渡し、並行してちょっと効果を入れたいところがあったのでCG加工に出しました。
加工はプロデューサーを兼ねた佐藤さんにお願いしました。(本職はCGディレクター)

完パケができたのは撮影終了一年後の2020年でした。
今思うと長いプロジェクトだったなとつくづく思います。

と、今までだったらここで終わりだったのですが、『11月19日』の縁でありがたいことに完成後すぐに劇場公開の声がかかり、今に至ります。
これまでなかった宣伝会議の参加など、非常に貴重な経験をさせていただきとてもありがたいことです。
配給がついていないので、一般的な商業作とは異なるフローではあると思うのですが、劇場公開に向けての道筋を誰かと組んで進ませてもらうというのは何か得難いものを得た用に感じています。

『階段下は××する場所である』は来週9/11から公開されます。
映画ナタリーさんで冒頭が独占公開されていますので、ご覧いただきよければ劇場にも足を運んでいただけると嬉しいです。

https://natalie.mu/eiga/news/443348


今日は以上です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。



 

DCP(デジタルシネマパッケージ)の作り方ー自作が劇場公開されるということー

3年ぶりに更新します。
以前から以下の記事でも書いていたのですが、自主映画を作っていました。

撮影レポート 2年間の激闘『11月19日』
http://undersiege.blog112.fc2.com/blog-category-9.html

撮影レポート 自主映画「それから、」
http://undersiege.blog112.fc2.com/blog-entry-161.html

この2年で環境に変化がありまして、2019年に縁から声をかけていただき前作『11月19日』が劇場公開されることとなりました。
単館で公開期間も1週間とはいえ、商業的な公開をされるというのは自主上映とは全く意味合いが異なり、メディアにも乗りますし、一般の批評にも上がりますので私個人にとっては大きなインパクトとなりました。
一応映画監督を名乗っていいことにもなりましたし。

この度、2度目の上映機会をいただき『階段下は××する場所である』という私の次作が9/11から公開されることとなりました。
https://eiga.com/movie/95367/



今日の記事は公開に当たって、劇場のデジタルシネマ形式で上映するのに必要なDCPを個人で作成する方法について記載したいと思います。非常にニッチな層向けな記事になりますが、DCP作成は業者に依頼すると長編の場合作業費10万は軽く超えますので、私のような低予算作品の制作者向けに技術資料として残すことにしました。

■DCP とは何か?


DCPとはDigital Cinema Packageの略称で、デジタルシネマの映写機が読み込む形式の動画と音声をまとめた1つのパッケージのことです。
普通の音声と動画が一つになった動画ファイルとは全く形式が異なり、PCやスマホなどの一般的な動画再生ツールでは、再生はおろか読み込むこともできません。
劇場公開に際して、劇場によってはブルーレイディスクでの公開なども可能ですが、ブルーレイとDCPでは映像の質感に大きな差がありますし、音声もステレオ2CHしか対応していませんので、5.1CH(系6CH)の劇場音声に比べて音の厚みにとても大きな差が出てしまいます。

そのため、商業的に公開される場合は基本、オリジナルファイルをDCP化する作業が必須となります。

■下準備


まず、オリジナルの完パケ動画(音と動画が一体になった普通の動画ファイル)を用意します。
動画の場合フレームレートが30フレームだったり、あるは23.976だったりということがあると思いますが、DCPの場合映像は、JPEG2000という画像の連番データとなり24フレーム固定となります。
形式によっては別の30フレームなども受け付けるようですが、シネマサーバによっては受け付けない可能性があるため避けておいた方が良いでしょう。
後にDCP化する際、24フレーム以外のフレームレートの動画は24フレームに変換しておいた方がスムーズかもしれません。
DCPの過程で変換されるのでしなくても大丈夫なはずです。

DCP作成のフリーツールとしてはOpen DCPというフリーツールが有名ですが、私は後発のDCP-o-maticというツールを使用しました。Open DCPは歴史が古い分ナレッジも豊富なのですが、DCP-o-maticは関連ソフトにValidateチェックするためのプレーヤーがあるのと、将来的に一番悩ましい手順であるLinux固有のext3フォーマット化もサポートしてくれそうなのでこちらでやりました。

こちらからダウンロードできます。
https://dcpomatic.com/download


■DCP化作業

まずはDCP-o-maticを立ち上げます。
「File」>「New」をクリック、データを収納するフォルダを作成します。
名前はなんでもいいですが、半角英数字のみであまり長い名前は避けておいた方がいいでしょう。
DCP.png


次に、画面上の「Content」>「Add file」をクリック、下準備で用意した完パケ動画ファイルを読み込みます。
DCP2.png

DCPタブをクリックして動画情報を入力していきます。
DCP3.png

以下、入力すべきと思われる項目です。

「Name」はなんでもいいですが、半角英数字のみであまり長い名前は避けておいた方がいいでしょう。

「Standard」は、基本Interopで。SMPTEという形式も選択でき、30フレームなど24フレーム以外にも対応しているようですが未確認です。

画面下部Videoの中のContainerは、今回作成した形式が16:9ですので、DCI Flatを選択しました。
16:9だと正確には画面比率が1:1.78になります。DCI Flatは1:1.85と少し横に長いためサイドレターになって画面端に黒みが入ります。
16:9の場合ここで少し悩ましいことがあります。
ここを1.85(Flat)にすることで黒みが消えますが、その分画面が横にストレッチされて全体的に全てが横に引き伸ばされてしまいます。作品によってはあまり気にならないかもしれませんが、私の場合は画面が歪んでしまうのを避けるため黒みはそのままにして比率もそのままにしました。

以下のDCP-o-maticの技術フォーラムも参考にしました。
https://dcpomatic.com/forum/viewtopic.php?t=246

JPEG2000 bandwidthは、その名の通り帯域幅です。数字を大きくするほどビットレートが上がって画質も向上すると思われますが、デフォルトの200Mbit/sにしておいた方がいいようです。大きくしすぎると、読み込まない可能性があるため。

このようにプレビューも可能です。前述の通り、16:9のためサイドレターとなって横に黒みが入っています。
DCP4.png

Audioについては、音が一体になっている動画ファイルを読み込めば自動的に読み込まれます。『階段下は××する場所である』は5.1CHですので系6CHぶんの音が自動的に読み込まれています。
ステレオ2CHの場合はLとRの2CHに振り分けられます。
DCP5.png

これで書設定は完了です。
「Jobs」>「Make DCP」をクリックするとDCPの書き出しが始まります。
書き出し前に自動的に設定に矛盾がないかのチェックが走ります。エラーが出た場合は設定を見直してください。
長編動画の場合は書き出しだけで丸一日かかります。

■DCPの有効性チェック

DCP-o-maticにはDCP-o-matic PlayerというDCPの再生ツールが付いてきます。
フリーツールなので質は低く動作がカクカク(マシンスペックはあまり関係ない)なので、簡単な有効性チェックにしかなりませんが、再生可能で音が出てくるくらいは確認できますので無いよりは全然いいです。

使い方は簡単で、以下のように「File」から先ほどの手順で書き出したDCPフォルダを指定して読み込みます。
dcp8.png

あとおすすめ設定として、再生時の映像クオリティを「quarter resolution(1/4)」まで下げておくことがあります。
「full」だとカクカクで見れたものでは無いですが、「quarter 」まで下げるとだいぶマシになります。

dcp9.png

DCPの作成については以上です。
後は作ったDCPをハードディスクに入れて劇場に納品します。

これがMACの場合難関で、DLPは基本ext3というLinuxフォーマットにHDDをフォーマットしないと読み込めないというのが大半です。場所によってはWindowsのNTFS形式でも可というところがありますが、MACでよく使われているMac OS拡張やexFATに対応しているところは寡聞にして知りません。

故にMACでは仮想デスクトップにUbuntuなど建てて、ext3にHDDをフォーマットし仮想環境上でDCPフォルダをHDDに投入するという作業が必要になります。(私もそうしました)
私の場合はもともとParallels Desktopという製品(有償)を使ってWindowsの仮想環境を構築してあったので、新たにボリュームを作成してUbuntuを建てました。

PCの基本的知識があれば、操作的にはそんなに難しくはないのですがただただ面倒臭いです。
Windowsユーザの場合は、便利なフリーのフォーマットツールがあるのでそれを使えば良いかと思います。

この辺は、DCPの作り方というよりPCの使い方なので割愛します。
しますが、いつか気が向いたら書くかもしれません。

今日は以上です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
 

アイドル映画としてはほぼ完璧。『ニセコイ』

■個人的評価 38(95)/100
ニセコイ 
あらすじ
極道組織「集英組」組長のひとり息子である一条楽は、勉強ひと筋でケンカが嫌いなごく普通の男子高校生。
平凡な幸せを望む彼には、忘れられない初恋があった。
幼い頃に出会った女の子と、将来再会したら結婚することを誓い合い、彼女は「鍵」、自分は「錠」のペンダントを肌身離さず持っていようと約束したのだ。
ある朝、楽は登校中に門を飛び越えてきた転校生の女子・桐崎千棘から飛び蹴りをくらう。アメリカのギャング組織のひとり娘である彼女は暴力的で口が悪く、楽との相性は最悪だった。
そんな2人が、親の組織同士の抗争を止めるため、強制的に恋人のフリをすることになってしまう。

すごい久しぶりの投稿です。
で先週末に封切りになったこれなんですが、なぜ書こうと思ったかというと色んなところでくそミソに叩かれていたからです。
「これは俺が擁護するしかない!」そう思ったら筆を取らずにいられませんでした。

ちなみに38点は普通に見たときの点数、95点は中島健人と中条あやみのアイドル映画として見た点数です。

■褒めポイント1・アイドル映画としては完璧だぞ!


本作のビジュアルはクッソダサいです。
イメクラに出てきそうなペラッペラのコスプレ衣装きてみんなが超大げさな芝居で漫画の変顔をトレースしているだけです。
で!す!が!本作では私がアイドル映画に求める要素3原則が守られています。
1.アイドルは走らなきゃいけない。
 最後に金髪カラコンの中条あやみ…じゃなくて千棘を追いかけて達成。
2.(男性)アイドルは無駄に脱がなきゃいけない。
 プールに落とされて出た後に達成。
3.ダンスしなくてはならない。
 劇中劇で達成。

唯一惜しむべくらくはエンドロールで2人がデュエットしてなかったことですが
それが守られていたらアイドル映画としては100点でした。

■褒めポイント2・原作より話が明らかに締まってるぞ!


本作の流れはこうです。
1幕:出会い→2幕:秘密の関係の日々→3幕:クライマックス演劇

本作のクライマックスとなる「ロミオとジュリエット」の演劇は原作ではコミック6巻にあたり実は全25巻においてまだ前半部分にすぎません。
1本の映画とするために大幅な脚色がされているわけですがそもそも原作のニセコイは長期連載にありがちな「エグザイル並みに増殖するヒロイン」「大事な場面で主人公が突然聴覚障害になる」という大きな問題を抱えており、終盤の方なんてもう楽が鈍感通り越してサイコパスなんじゃないかと思えるくらいでした。

故に!このようにこざっぱりした終わり方をしただけで私などの原作ウォッチ組は「ニセコイなのに2時間で話が進んでる!」と感動してしまうのです。安くてすみません!

あとラストの劇中劇はミュージカル調に改変されてましたね。
これはアイドル中島健人を引き立たせる英断でした。

■褒めポイント3・ビジュアルが!見せ方が巧いぞ!


褒めポイント1でビジュアルクソダサいと書いて置いてすみません。
嘘でなく本当にビジュアルはクソダサいです。
ただクソダサいだけなら凡百の失敗ティーン向け映画に過ぎないのですが、本作の場合ペラい衣装とやけにフラットかつハイキーな照明以外はかなり映画的な作りになっています。

まずこの手の作品は大抵被写界深度がやけに常に深いことが多いですが、本作は逆に浅めのカットが多くまたアイドル映画故にアップショットが非常に多いですが見辛くならないように配慮して、カット配分が絶妙です。
構図も人物がペラくならないように縦に置くことを意識しており、この手の映画にありがちな書き割り前にして芝居してるような奥行きのなさは感じませんでした。
私としては抑えを弱めにしてもう少し影を入れ、もっと人物にもペラい衣装にも奥行きを持たせて欲しかったですが、アイドル映画でそういうライティングをするのはどうやらこの国の映像業界では御法度のようなのでもう諦めました。


というわけで映画としてはちょっとどうかと思うのところもなくなくなくもないですが
アイドル映画としてはほぼ完璧です。
そして河合勇人監督は間違いなくできる男です。
次回作も楽しみにしています。
中島健人のファンなら自信を持ってお薦めできます。



 

極私的 2017年公開映画ワースト10

連続投稿3つめ。
私的ワースト10です。

何を面白いと思うかつまらないと思うかは完全に個人の感性によるものであり
下記にあげるものを好きだと言う方のことを否定するつもりは毛頭ありませんし
映画製作は凄まじい労力を要します。
製作陣には敬意を示しつつ、完全に個人の好みとして書きました。

あとツッコミ入れるためにネタバレしてます。

10.『氷菓』
氷菓
密室劇の映像化は難しい。

TVアニメ版のファンから安易なアニメ実写化として
叩かれまくっていた作品。
それは大きな勘違いで原作の古典部シリーズは小説なんで
これは原作小説の映像化作品です。

この作品についても悪感情があるとかではなく
密室劇っていうのは本当難しいんだなと再認識させてもらいました。
演出に触れたことのある方は想像つくと思いますが
こういう部屋の中でひたすら会話して進行していく話は
画変わりがさせ辛く、ロケセットなら壁をぶち抜いたり
屋根が無いので俯瞰からいったりとそれなりに構図のバリエーションも
とれなくはないですが、借り物の学校の教室では不可能なので本当にきついです。

安里監督は細かくカットを割り校舎内の移動とカットバックさせたりして
なんとかリズム良くしようとしていましたが
あまりにも話が地味すぎて「退屈」以外に表現の仕様がない作品になってしまいました。
これは監督のせいとかじゃなくもう原作がとことん映像に向いてないからとしか
言いようがないんじゃないでしょうか。

アニメ版は非常に地味な原作を
ギラギラにスーパーリアルな誇張表現で
しかも恋愛要素を大幅に付け加えることで情緒たっぷりな青春ものに脚色していましたが
アニメを手掛けた京都アニメーションと武本監督が凄いだけで
実写版が悪いとかとはちょっと言い辛いなと…。
ただ、退屈なのはどうしようもないもので。

9.『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(Fireworks, Should We See It from the Side or the Bottom?)
2017打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
オリジナルが偉大すぎた。
http://undersiege.blog112.fc2.com/blog-entry-222.html

8.『忍びの国』(Mumon: The Land of Stealth)
忍びの国
言ってることとやってる事がまるで合ってない。

天正伊賀の乱を基にしたNEO時代劇。
殺陣とカッティングの巧さで人知を超えた忍者アクションがひたすら続く
中盤くらいまでは面白かったのですが
後半に差し掛かるとだんだん話運びのぎこちなさが気になってきます。

無門という金にしか興味ない無頼漢の忍びがお国という女性と
忍びなのにまともな倫理観持ってる下山平兵衛の存在で変わっていく話…
かと思ったら全然そうではなく平兵衛は無駄死ににしか見えないし
お国はお国で「戦に行きなさい!」って無門を叱責して送り出した癖に
舌の根乾かないうちに「死んではなりません」とかほざき出して
「いやいや!戦に行かせたのお前だろうが」って思わずツッコんでしまいました
しかも無門が戦死したって聞いた時ショック受けてたし
だからお前が戦に行かせたんだって!!

そしたら段々細かいことが気になってきちゃって
金が出ないからさっさと国を見捨てて逃げ出した里の忍達を
無門は北畠家秘蔵の小茄子の価値で釣って闘わせるんですけど
そもそも信用ゼロの無頼漢がそんな物どうやって金に変えるつもりだったのかとか
味方もゲスばっかなんだから闘うよりその小茄子盗みにくるんじゃないのかとか
あとキャラクター的にも完全に侵略しにきてる織田軍の方が正統派なんですよね。
偉大すぎる親父のせいでヘタれになっちゃった信雄がペルソナを脱ぎ捨てたことで
家中が一致団結するところで完全に正義が侵略側にあるように見えちゃうんですよ。
実際狙って味方と敵のキャラクターを逆にしたんでしょうけど
それやったせいで忍側が全然魅力的じゃ無くなっちゃいました。
これが「舐めてた織田軍にやられたことで逆に伊賀の里が団結する」だったら
もう少し話がスマートだったのになと。

部分部分は面白いのに通して観ると残念。
そういう作品でした。

7.『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(The Mummy)
ザ・マミー
1パイも出てこない『スペース・バンパイア』

ユニバーサルによる過去ホラー作のリブート企画「ダーク・ユニバース」の第一弾。
邪悪な古代エジプトの王族が蘇ってくるという内容ゆえに
公開前から『ハムナプトラ』シリーズのパチ物臭が半端無かったですが
予想を覆して出てきたのはエジプト版『スペース・バンパイア』でした。

ストーリー的にもジキル博士が存在自体不要だったり
そもそもこいつの作った組織も仰々しく出てきた癖に
何がしたかったのか全くわからないまま壊滅
邪悪なエジプトの王女が操るパワーの原理も不明
そもそもなんでこいつは異教徒である十字軍の遺体を操れたんですかね?
良いのかお前ら?異教徒だぞ。騎士の矜持はどこにいった。
あとトム・クルーズがなんかすごい力に目覚めて最後にマトリックス無双して
続編匂わせて終わります。
一体なんで急に強くなったのかは観ていてもよくわかりませんでしたが
とりあえず批評的にも興行的にも失敗してしまったので多分続編がないのはわかりました。

纏めるとオッパイが出てくる分『スペース・バンパイア』見た方がお得だと思います。

6.『ハルチカ』(Haruta & Chika)
ハルチカ
暴力反対。

吹奏楽にかける青春。
いいですね、青春の躍動感に音楽、最高の組み合わせです。
でも暴力はダメです。
映画内で事あるごとにチカはハルタに暴力振るうんですけど
男女逆に考えてみましょう。
暴力は暴力です。
劇中で幼い頃チカがハルタに暴力振るったのはハルタを守るためと説明されてましたが
高校時代でもボコボコ殴ってました。

あとすごく気になったのがどこにフィクションラインがあるのか
わからなくなると言う点で
部員勧誘パートの終了直後とラストで急にミュージカル調になるんですよね。
冒頭からそうなら「そういうもの」として見てられたんですが
急にそれまで守ってきたフィクションラインを飛び越えてくるので
どこまでリアルでどこからリアルじゃないのかわからなくなっちゃいました。

あと個人的に勘弁して欲しいのが
仲間を鼓舞するためにみんなで押しかけて演奏するっているパターンで
去年の「青空エール」でもすごく気になったんですけど
多少は若気の至りで許されても劇中で2回もやるのはやめて欲しかったです。
いいものっぽく描かれてましたけど関係ない人にとってはただの迷惑行為ですからね。

5.『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(Sword Art Online The Movie: Ordinal Scale )
オーディナル・スケール
設定が雑。

ターゲット層が明確なニッチなアニメファン向けアニメ映画では
昨年最大のヒット作。
いや、私このシリーズTV版を全話見ていたくらいの知識なんですけど
なんか設定に違和感というかおかしく感じるところが多く
なんでAR空間で実質生身で戦ってるのに特に鍛えてもいない奴が三角跳びとかしてんの?とか
チート使ってた奴はなんで最初からキリトが障害になりそうだってわかってたのに
レベル上げしてる間に倒さなかったの?とか
記憶をスキャンするのになんでコピーじゃなくて本人の記憶消すの?とか
ゲーム中でやられるとヤバいの分かってるのになんで皆AR用のデバイス外さないで
アホみたいに闘い続けてるの?とか
そもそもなんで最後バトルに展開したの?闘う必要あった?
とか展開と設定のノイズが多すぎて話に全く集中できませんでした。
根本的な疑問なんですけど本当に誰かを始末したいなら、AR内の拡張現実空間で戦わないで
闇討ちして物理で殴った方が早いし確実じゃないですかね?

戦闘描写も作品の売りの一つなはずですが
闘いに駆け引きがないというか、ただ叫んで突っ込んでいってるだけにしか
見えないのも個人的にはちょっと…。
その点だけで言えば同じニッチ層向けアニメでも
『Fate/stay night』の方が圧倒的に優れていました。

アニメーション自体のクオリティは素晴らしく
ドラマパートに関しては演出面でも感嘆しました。
が、根本的にキャラクター設定が私の感性に合わないらしく
どうしてもオタクがイキッてるだけにしか見えませんでした(クラインとエギル以外)。

ファンの間では概ね高評価で受け入れられたようですが
この作品はあらゆる意味でTVシリーズを全話楽しんで見られた人向けなんですね。
私もアインクラッド編は大好きなんですが、
本作も含めてどうしてもそれ以外のエピソードが蛇足にしか見えないもので。

4.『鋼の錬金術師』(Fullmetal Alchemist)
鋼の錬金術師
ビジュアルが受け入れられない。

一番キツかったのがオープニング。
髪をブリーチしたちゃり毛と襟足の長い少年…じゃなくてエドと
髪をブリーチしたちゃり毛と襟足の長い少年…じゃなくてアルが
ママを蘇らせるため人体錬成をするこのシークエンス。
なにがやばいって、自主映画でも今日び滅多に見ないパーフェクトな棒読み
なにがやばいって、タイトルクレジットの間抜けな演出。
この瞬間本作はあの2004年に公開された伝説の作品
『デビルマン』の高みに触れていた言っても過言ではありません。

あまりに凄い劇物を投与されてしまい、オープニングの時点で
本気で劇場から出たくなりましたが、賢者の石(偽)を追う最初の戦闘描写が素晴らしく
また金髪の山田涼介さん…じゃなくてエドも
茶髪の本田翼さん…じゃなくてウィンリィも冒頭の少年たちに比べれば
「そういう物」として受け入れられなくもなってきます。

またメイクのお陰でラスト(松雪泰子さん)あたりは我慢できる範疇にあり
さすが曽利文彦監督というかアルのCG造形は日本映画としては相当にハイクオリティだったので
段々違和感が無くなってきます。(違和感が無くなるとは言っていない)
金髪の蓮佛美沙子さんと大泉洋役の大泉洋さん以外。

終盤の展開で時間経過が滅茶苦茶だったり
瞬間移動でもしたのかと思うくらい急に場面が変わったりと
気になる所もありましたが少なくともカッティングやCGモデリングの面では
かなり国内作品でも良いセンに行ってました。
逆に言うと役者のビジュアルに対する違和感が半端じゃなく
ただその一点のせいで大幅に興を削がれてしまったのが残念でたまりません。

3.『たたら侍』(Tatara Samurai)
たたら侍
あり得ないぐらい話が退屈。

何も起きない話ってありますよね?
有名なところで言うと古くは『東京物語』
新しいところで探すとベストに入れた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
劇中大した事件は起きないけど終わった時に小さな変化を感じる
ストーリー性ではなく情緒を楽しむ、そういうタイプの作品です。
本作はそういう何にも起きない話です。
ただ、上記に上げた作品群と違うのは結果的に何にも起きない話になっているだけで
1大スペクタクルにするつもりで作ったら何にも起きない話になってしまった。
そういう肩すかし系映画です。

時は戦国時代、高度な製鉄技術を持つ出雲の村に住む
技術者の伍介(主人公)が立身出世を夢見て徳川家に士官⇒初戦で心おれて帰郷
と2コマ落ちみたいな展開でいきなり予想を裏切り
いかにも胡散くさい商人に唆されて、どうみても怪しいのに村を武装化したら
用心棒として胡散臭い野武士を商人がつれてきて村が乗っ取られる。
伍介ひたすら何もしないまま、商人の姦計に気付いたAKIRAが攻め込んできて
野武士を倒したのに商人に火縄で撃たれて死亡。
商人の火縄を切った後、伍介ボーっと突っ立ったまま。
その後商人の姦計はどうなったのかとかとくに描かれず
特に村の様子も何もかわらず、伍介ボーっとしたままエンディングへ。

純粋に疑問なんですけどこの話、一体どこが面白いと思って作ったんでしょうか?
始めと終わりで村にも伍介にも何の変化も見えず、主人公のはずの伍介は終始何もしないまま。
2時間ぐらい尺があるのですが、冒頭の10分と結末の10分を繋げても成立してしまうような話に
何の楽しみを見いだせばいいのか私には全くわかりませんでした。

脚本も兼ねた錦織良成監督とは、昨年ある所でお話しする機会があり
映画への熱い想いや企画を実現させる高いバイタリティを知っただけに
映画人としてはすごく尊敬しているのですがちょっとこれは…。
すいません、やっぱつまんないものはつまんないです。

2.『本能寺ホテル』
本能寺ホテル
頭の困った女性が戦国時代にタイムスリップするけど何も起きない話。

TV企画にTV演出家という約束された事故物件のフジテレビモデル。
その…なんていうか…タイトル下に書いた1行が全部なんですよね。
すごく乱暴に要約すると綾瀬はるかさんの演じる、
失業中の(軽度の知的障がいがあるようにしか見えない)流されやすい女性が
タイムスリップして信長に会った結果歴史の教師を目指すことになる話です。

タイムスリップして戦国時代に行った結果がそれって
この話タイムスリップも信長も必要ないんじゃないですかね?
信長がお人よし過ぎてそもそもこんな奴は天下統一目指さないとか
作中の一発ギャグがことごとくスベッてるとか他にも色々あるんですけど
舞台設定にあんまり意味があるように思えないのが一番気になりました。

あと演出がまんまTVドラマ。
BGM使いすぎ、説明台詞多すぎ、スローモーション使いすぎ。
話自体は上述の『たたら侍』の方が退屈だったのですが
『たたら侍』は映画的な作りにはなっていたのでこちらが下回りました。

1.『劇場版 お前はまだグンマを知らない』(You Don't Know Gunma Yet )
お前はまだグンマを知らない
無の境地を教えてくれる。

つまんなかったです。
以上。

…じゃなくて、この作品はそもそも映画として評価することが間違っているのかもしれません。
これ、映画じゃなくてコントなんですよ。
フラットに光が回って被写界深度が常に深く
人物は横並びで画面に奥行きが全くない、衣装もテラテラ。
まさに書き割を前にしてやるコントそのものです。
89分あるんですけど、同じ映像見るなら陣内智則のコントを89分見た方が
絶対幸せになれます。

本作については怒りとかさえもないです。
本当にただ「無」。
これ、多分作ってる本人たちでさえも面白いと思ってないんですよ。
作ってる方もギャグがことごとくスベッてるのは自覚してるから
変顔しながら大袈裟な抑揚でモノローグ垂れ流しにして
「ほら!ここ笑う所ですよ!」
ってTVで出すテロップの代わりに観客にサイン送ってるんです。
これはウケるって思ったから立ちあがった企画じゃなくて
吉本興業の節税対策かなんかだったんですかね?
だとしたら立派に役目を果たしたことになります。

お疲れさまでした。
 

2017年公開日本映画 私的ベスト10

10.『きみの声をとどけたい』(Your Voice -KIMIKOE-)

きみの声をとどけたい
ベタだけどそれがいい。

http://undersiege.blog112.fc2.com/blog-entry-224.html

9.『探偵はBARにいる3』(Phone Call to the Bar 3)
探偵はBARにいる3
変わらない安定感。

毎度おなじみ道産子ご当地映画シリーズの第3段。
ストーリーがややシリアスになった反動か
ギャグの下ネタ含有度が倍増したのも個人的にはプラスです。
監督が2までの橋本一さんから吉田照幸さんに交代しましたが
どちらも職人監督で長くテレビドラマの演出に関わってきたという共通点があり
あまり差異は感じませんでした。
このシリーズはもう永遠に続いてほしいですね。

8.『勝手にふるえてろ』(Tremble All You Want)
勝手にふるえてろ
人はこじらせ過ぎるとこうなる。

2004年に『蹴りたい背中』で芥川賞の最年少受賞者となってから
文壇のアイドルとして存在感を発揮してきた綿矢りさ原作小説の映像化。

私恥ずかしながら『蹴りたい背中』以外の著書を読んだことがなく
そんな程度の予備知識のまま観賞したのですが
この『勝手にふるえてろ』をみて、綿矢先生は感性が10年以上前から
かわってないんだなと。
要するに瑞々しかったってことです。

あと、監督多分女性なんだろうなと思ったらやはり女性でした。
個人的に女子トイレのシーンと女性の靴をフィーチャーするカットがある場合は
高確率で女性監督だと思ってます。
ほら、男の監督だと女子トイレで起きてることってよくわかんないし
女性の靴に意味を持たせるのも感覚的によくわかんないんで。

7.『サバイバルファミリー』(Survival Family)
サバイバルファミリー
企画力が全て。

毎度おなじみ矢口史靖監督の企画力が光る
企画が全ての1本。

男子シンクロ、高校ジャズバンド、航空業界、林業
ときて今度は電力が消失した世界でのサバイバル生活
という実にらしい作品で、特に大きな驚きは無いですが期待値通りに
楽しませてくれる安定感は素晴らしいです。

6.『散歩する侵略者』(Before We Vanish)
散歩する侵略者
示唆に満ちた寓話。

強い作家性を持っている数少ない日本の映画監督の一人
黒沢清最新作。
人類から少しずつ物の概念を奪うことで
地球を侵略する宇宙人の話。

色々と示唆に満ちている作品ですが
個人的には概念を奪われた人というのは
アルツハイマー病の比喩なのかと。
意味を失った事で客観的には困った状態でも主観的には幸せに感じる。
意外と失う事は悪い事でもないのかもしれませんね。

5.『夜は短し歩けよ乙女』(The Night Is Short, Walk on Girl)
夜は短し歩けよ乙女
セカイ系の亜種とも言うべき独特な世界観。

なんだかんだと言ってもそれは運命だから最後は惹かれるんだよという
わりと身も蓋もない話なのに、展開があまりにも斜めを行っているために
全然それを感じさせない不思議な魅力に溢れたロマンス。

共通するキャラクターが登場する
同じ監督・同じ原作者の「四畳半神話大系」を
観ているとより楽しめます。

4.『三度目の殺人』(The Third Murder)
三度目の殺人
現代版「藪の中」。

強い作家性を持っている数少ない日本の映画監督の一人㈪
是枝裕和最新作。

ある殺人事件をめぐり関係者が全員違った証言をする
いわゆる「信頼できない語り手」的なサスペンス映画。
これを同じ人物でも人によって全く見え方が違うという
人間の多面性を描いた寓話として観るか
それともスノッブな犯罪者に弁護士が振り回される話として観るか
は人次第ではないでしょうか。

ただ、冒頭の空撮カットはちょっと違和感しました。
是枝監督はこういうダイナミズムとは無縁のかなり禁欲的な演出をする
イメージだったので。
あとなんか全体のトーンから浮いちゃってる感じも。
多分ドローンで空撮したんだと思われ
今はインディーの世界でもドローンで空撮する人は割とおり
こんな安く空撮できるなら使っちゃいたくなるのも当然ですかね。

3.『Fate/stay night [Heaven's Feel] 第一章「presage flower」』(Fate/stay night: Heaven's Feel)
Fate stay night
一見さんお断り。ニッチでピンポイントな中二病伝奇。

映画というのはそれ1本で完結しているコンテンツであって欲しい。
そう思います。
故にこういったオタク向けのピンポイントなアニメ映画はあまり
良いものとは思えないのですが…。

伝説的大ヒットを記録したエロゲの映像化作品であり
元のゲームが共通ルートから3つのストーリーに分岐するということから
1ルートだけを映像化しても何のことやらわからない作りになっている上に
共通ルートの部分をオープニング映像に思いっきり凝縮して流し
「分からない人は付いてこなくていい」という強烈なメッセージを冒頭から発してきます。

こういう作品を映画として評価すること自体がそもそも間違っているのかもしれません。
しかし、意味がわからなくなることを承知の上で
流れ上必要なシーンをカットし逆に原作の補完をするためのシーンを大量に追加したことや
戦闘場面での数の暴力にも思えるヌルヌルなアニメーションを見ると
製作陣の偏執狂的なこだわりには敬意しか感じません。

2.『帝一の國』(Teiichi: Battle of Supreme High)
帝一の國
大仰を突き詰めるとこうなる。

古屋兎丸によるシュールギャグ政治ピカレスクロマン作品の実写化。
私はコミックを実写化するときには、漫画的表現は避けて
逆に出来るだけリアルに抑えた芝居でやるべきだと思っているのですが
大仰さというのもここまで突き抜けてアホっぽさを狙えば効果的なんですね。
あと、非常に漢密度高い漢臭い作品ですが
狙ってか皆の関係が中々ホモホモしいのでそういう方面の需要も取り込めたはずですが
興行的には失敗だったようです。
勿体無い!

2010年代に入ってからコミックの実写化もなかなか
高クオリティのものが増えてきており嬉しい限りです。

1.『夜明け告げるルーのうた』(Lu Over the Wall )
夜明け告げるルーのうた
これは湯浅版『崖の上のポニョ』だ!

5位に続いて2本目の湯浅監督作。
一言で言うなら湯浅版、崖の上のポニョ。
しかも本家ポニョより遥かに出来が良い!(個人的見解)
仮に同じ題材おなじ脚本で20年前に宮崎駿監督が撮ったとしても
こんな尖った魅力を持つ作品には絶対にならなかったと断言できます。

ジブリが追い求めてきた崩さないまま綺麗な作画で美しく動かす
とは対極な崩したデザインでとにかくヌルヌル動かす超デフォルメされた演出は
アニメでなければ許されないアニメだからこその魅力です。
20年前『マインド・ゲーム』の頃は先鋭的すぎてあまり一般受けしなかった
湯浅監督ですが時が経ちちょっと作風がマイルドになったたためか
アバンギャルドな部分とベタな部分が程よく融合し、癖のあるキャラデザインが
受けいれられるなら誰にでもお勧めできます。

2016年は近年稀にみる邦画の当たり年でしたが
2017年は良いなと思う邦画が大幅に減ってしまいました。
総じてアニメ映画の方が出来が良かったのは例年通りでした。 

2017年公開外国映画 私的ベスト10

もう2月ですがあけましておめでとうございます。
毎年やってるのでこれだけはやっておこうかと。

外国映画の私的ベスト10です。

10.『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(IT)

イット “それ”が見えたら、終わり
ホラーテイストのジュブナイル映画。

モダンホラーの帝王、スティーヴン・キングの同名小説2度目の映像化。
スティーブン・キングの映像化作品というと
『ショーシャンクの空に』や『スタンド・バイ・ミー』など
非ホラー作品が高く評価される一方、本筋のホラーの映像化作は
イマイチな評価だったりするのですが
本作に関してもホラーというよりはジュブナイルものといった作りに近く
ホラーが苦手な方でも楽しめるのではないでしょうか。

9.『哭声/コクソン』(곡성 The Wailing)

哭声
悪魔は虚言に真実を混ぜる。

日本から國村隼さんが参加したことでも
ちょっと話題になった韓国映画。
ビジュアル的には祈祷師のダンスだけがひたすら
脳裏に残る作品でしたが
「悪魔は嘘をつく」という冒頭の言葉の通り
悪魔は誰だったのか?
誰の言葉が真実だったのか?
いくらでも解釈の仕方があるそういう難解なタイプの作品です。

8.『LOGAN/ローガン』(Logan)
ローガン
最後のウルヴァリン(最後とは言っていない)

2010年代の作品とは到底思えないほど
杜撰なジャパニーズ描写以外全然覚えてない
『ウルヴァリン: SAMURAI』に続くX-MENシリーズ10作目。

少女を国境まで連れていくというとことんシリアスかつ
とことんソリッドでシチュエーションを単純化したのが
大成功。
これでジャックマンウルヴァリンも終わりかと思うと
寂しいようなそうでもないような。

7.『ワイルド・スピード ICE BREAK』(The Fate of the Furious / Fast & Furious 8)
ICE BREAK
俺たちはファミリーだ。

もう永遠に続いて欲しい脳筋カーアクション映画。
ジェイソン・ステイサムが味方に加わったことでますますアホっぽさが増した以外
いつもと同じなので特に書く事ないです。

6.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』( Guardians of the Galaxy Vol. 2)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
俺たちはファミリーだ×2。

宇宙番『ワイルド・スピード』。
血の繋がってないパーティメンバーが
チバラギのヤンキー的なノリで疑似家族として戦うという面で
『ワイルド・スピード』とやってることはほとんど一緒です。
ただこちらの方がメンバーのボンクラ感が高く
その1点でわずかに『ワイルド・スピード ICE BREAK』
を上回りました。

5.『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(Manchester by the Sea)
マンチェスター・バイ・ザ・シー
抑制の利いた地味な佳作。

暗い過去を背負った男と父を失った甥っ子の話。
過去と現在の時間軸をバラバラした構成になっており
中盤のあたりまで何の話を語ろうとしているのかが意図的に伏せられた
作りになっています。
個人的にはもう少し結末をはっきり語って欲しかったのですが
この抑制の利いた演出なら結末はあれで正解だったんでしょうね。

4.『新感染 ファイナル・エクスプレス』(し부산행 Train to Busan)
ファイナル・エクスプレス
バタリアン型ゾンビ・インKTX。

『哭声/コクソン』に続いて2本目の韓国映画です。
ソウルからプサンに向かう新幹線の中でゾンビの集団感染に遭遇してしまう
親子を中心に描いた群像劇。

エリート意識の高い自己中、妻を守って戦い抜く漢の中の漢
画に描いたような小悪党といった個性豊かなメンバーが
ちょっと改心したりしながら大体想像通りの順序でやられていくのも楽しいですし
『ミスト』パターンかと思わせつつちゃんと救いは残したまま締めるのも新鮮でした。

ゾンビの描写的に監督が『アイアムアヒーロー』好きなんだろうな
と思ったら造形面で大いに参考にしたとのコメントがあったのもポイント高いです。

3.『ベイビー・ドライバー』(Baby Driver)
ベイビー・ドライバー
シリアスなのに何かがおかしい。

冒頭が『ダークナイト』で大まかな筋が
『トゥルー・ロマンス』と『ヒート』と『ドライブ』
っぽくて話はシリアスなのにジャンルはコメディで
誰も歌って踊らないのにミュージカルでもあるという
エドガー・ライトのオタク魂全開なごちゃ混ぜ映画。

世間的に昨年のナンバー1ミュージカルは
『ラ・ラ・ランド』だったはずですが
私は圧倒的にこっちが好きです。

2.『メッセージ』(Arrival)
メッセージ
科学的にも正しいハードSF。

異星人と人類のコンタクトという
とことん使い古されたネタなのに新しいSF映画。
科学考証の正しさも話題になりました。
https://gigazine.net/news/20161116-arrival-stephen-wolfram/

ただ、本当の魅力はそういうリアリティへのこだわりではなく
使い古されたネタの中に叙述トリックを盛り込んできた
という構成の妙だと思っています。

1.『沈黙 -サイレンス』(Silence)
サイレンス
神は沈黙していたわけではない。

かのグレアム・グリーンをして「20世紀のキリスト教文学で最も重要な作家」
とまで言わしめた遠藤周作原作の映像化。
監督したマーティン・スコセッシはかつてカトリックの司祭を目指していた
ということもありこの宗教色に満ちた作品を作るにあたって
前作の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』とは全く真逆の禁欲的な演出に
終始したようです。

まず、全編とおしてBGMが全くといっていいほどありません。
その代わりに虫の音や風のざわめきといったSE音が強く強調され
音響の面から作品の持つ神秘性を強くサポートしています。
またカメラワークも動きまくった前作に比べて
フィックスと動きもパンニングが多くまた画面を狭くした
抑圧的なショットが多く挟まれていました。

それでいて上映時間2時間半超えの長尺なのに苦痛さを感じさせない
というのは凄いとしか言いようがないですね。

韓国映画が2本入りました。
それ以外は全部英語圏の作品ですが
非英語圏の作品だと
フランスとポーランド合作の『夜明けの祈り』(Les Innocentes)夜明けの祈り

ボスニア・ヘルツェゴビナとフランス合作『サラエヴォの銃声』(Smrt u Sarajevu)サラエヴォの銃声

あたりは印象に残ってます。
 

撮影レポート 2年間の激闘『11月19日』


お久しぶりです。
管理人です。

今回はレビューとかじゃなく個人的な話を書きます。
実は2015年にクランクインし2年の撮影とポストプロダクションを経て完成した自作が
今週末に山形と来月17日に東京で上映されます。

そこでこの2年の激闘として時系列に沿った撮影レポートを今日は綴っていきます。

■初稿完成〜製作可能性を探る〜ポストプロダクション
2013年‐2015年


今作のタイトルは『11月19日』初稿を書き終わったのは
2013年の暮れごろでした。
当時前作の長編を製作途中でなんとなく
「ちょっと規模的に厳しそうだけどこんなのやりたいな〜」
程度のノリで脚本を書いていました。
次は全然違うことやりたいと思ったので学園物ラブストーリー
という割と今まで考え付きもしなかったものにしました。
実写映画を意識したというより当時好きだったアニメの『氷菓』(今年実写映画が作られましたね)
と『秒速5センチメートル』(新海誠監督がこんなメジャーになる事を当時は想像もしませんでした)
の影響だったんですけどね。
当初は30分くらいの、点描描写にオープニングとエンディングがくっつけてある程度の短いものを想定してましたが
話しの「オチ」にインパクトをつけるために前振りを足していったらすごい勢いで尺が伸び
最終尺は84分になってしまいました。

前作の製作と展開が終わり、そろそろ次に乗りだそうとなった時
別のもう少しやりやすそうな物を考えもしたのですが
今までと同じ事やっても面白くないなと考えちょっと無理してでもやってみるか
と決めたのは2014年の中旬ごろだったと思います。

今回は学校という撮影地に加え、限界ギリギリの超低予算のため
・場所を無償もしくは格安で貸してくれる事
・エキストラを無償提供してくれること
・制服など統一させる小物をエキストラ分含めて提供してくれること
・劇中の大道具系を運搬手配借用(無償もしくは格安)でさせてくれること
という半端じゃなく厳しい条件が付いてしまいちょっとどうすればいいのか最初見当もつかない状態でした。

そんな中2014年10月ごろ伝手をたどって「山形いいんじゃない」という紹介を貰い
丁度雪国を想定していた脚本の内容に色々な条件と金銭面がギリギリクリアできた結果
クランクインの目処が立ったのは翌年初旬に入ってからでした。

今回何よりも大きかったのは山形で製作を一手に引き受けてくれた
佐藤哲哉さんの存在でした。

佐藤さんのブログ
http://tetsuya1974.blog129.fc2.com/blog-entry-933.html

最初山形フィルムコミッションに話しを持って行った際
「これは現地の製作担当者つけないと、とてもじゃないけど撮影まで持っていけないな」
と思い、誰かやってくれそうな人を探していたときに山形自主制作映像祭を主催していた
佐藤さんを見つけ駄目もとでお願いしたら2つ返事で快諾してくださり
本当に佐藤さんいなかったらどうなっていたかわかりませんでした。

また、今回山形市内だけでなく同じ県内の新庄市でも撮影したのですが
立ちあがったばかりの新庄フィルムコミッション関さんは自主制作にもかかわらず
時には山形市内の撮影までアテンドしてくださり本当にありがたかったです。
関さんは元々東京で製作部をなさっていた方だったので現場のことも熟知されていて
とても頼もしかったです。

山形フィルムコミッション
https://www.fc-yamagata.jp/
新庄フィルムコミッション
http://www.shinjo-fc.jp/

IMG_6346.jpg

■クランクイン〜クランクアップ
2015年‐2016年


撮影は当初、春と秋に2分割し季節感は実景で出す。
という予定でいましたが諸々の人と場所の調整の結果
およそ一年かけて春から翌年の冬までリアルに四季を追いかけて撮影することになりました。

クランクイン前にそれまで3年続けた撮影体制を一新し
新たな撮影部と録音部を迎えることになりました。(色々あって)
また百人以上の書類を選考してオーディションし
俳優部門と製作部門の全てのピースが埋まったのは3月のこと。
クランクインが5月初旬だったので結構ギリギリのタイミングでした。

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5月のクランクインから8月、10月、12月。12月は記録的な暖冬の影響で
狙ったカットを撮れず2016年1月の追撮を経て2月に東京でロケを敢行し
長い撮影期間は終わりました。

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東京撮影では専門時代の同期生だった増谷くんが製作を手伝ってくれ
彼の尽力もあってこれまた中々の物量だった東京での撮影も乗り切る事ができました。
IMG_6762.jpg
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■ポストプロダクション
2016年‐2017年


終了後私の方で編集を開始。
本職の方で凄まじい激務に見舞われたのと単純に尺とカット数が多かったのもあって
大体形になったのは2016年暮れのことでした。

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今回メインカメラにBlackmagic Design社の「Blackmagic Pocket Cinema Camera」
を使用しており、今まで一眼のEOS7Dとの違いとしてlog収録したというのがあります。
撮影部が私の「ピッカピカの画にしたい」という要求を考えた結果こうなったもので
なにが良いかといえばrawみたいにバカでかいファイルサイズにはならないけど
ダイナミックレンジが稼げて後処理で大きく色味を変えても破綻しずらいよというのが
logのいいところではあります。

ただもちろんいいことばかりではなく
収録時めっちゃ眠たい感じの画になって仕上がり想像し辛いとか
撮る方は撮るほうでこの画のせいで本当に露出が合ってるのかとか
感覚で判断せざるを得ないので技術に自信がなくて撮影チームがチームとして機能していないような場合は
素直に仕上がりの分かりやすいノーマルのピクチャスタイルにしといた方がいいですとだけは言っておきます。
あと、カラーグレーディングが必須なのでカラコレの知識とソフトも必須。

話それましたがそんなわけで編集後に撮影部にグレーディングを引き渡し
戻ってきたカットにこちらでもさらに編集と色味の調整を加え
今度は合成とCGに出しました。

audio.jpg

今回の製作物を見てもほぼほぼどこに合成やCGをつかっているのか不明ではないかと思いますが
雨設定なのにどピーカンの晴れがガラスに写っていたのを消したり、壁からポスターを消したり
空模様をハメ変えしたりと結構な所につかっています。
合成とCGについては佐藤さんが本職だったのでお願いしました。
これだけやっても自然な仕上がりにできるというグレーディングもそうですが
後処理の部分にかかる重要性というのが年々増していってるのを感じる良い経験にもなったものです。

並行して整音用のオフラインファイルつくって引き渡し。
整音作業があらかた済んだら2日ほどかけて全編立ち合いして最終的な音を決め
上がってきた合成カットと共に撮影部に戻して全体的な色味を調整。
さらに私の方で全体の色を微調整とCG合成の再チェックをして完了したのは
8月末のことでした。
製作開始から約3年、クランクインから2年半。
長い長いプロジェクトでした。。

冒頭にも書きましたが明日タイトル通り11月19日に山形で
http://tetsuya1974.blog129.fc2.com/blog-entry-933.html
12月17日に東京で
https://www.facebook.com/events/379137362516999/
上映予定しています。

有料で申し訳ないのですが足を運んでいただけると嬉しいです。
今日はこんなところで。 

ベタだけどそれがイイ!『きみの声をとどけたい』

■個人的評価 73/100

きみの声をとどけたい
あらすじ
海辺の町・日ノ坂町で暮らす16歳の少女なぎさは、将来の夢を見つけることができず焦りを感じている。
彼女は幼い頃に祖母から聞いた「言葉には魂が宿っている」という言霊の話を信じていた。
ある日、何年も使用されていないミニFMステーションに迷い込んだなぎさは、出来心からDJの真似事をする。
偶然にも放送された彼女の言葉は、思いがけない人物に届いていた。


なぎさ(CV片平美那)を中心にした女子高生たちが主人公の群像劇で
恋愛要素皆無、今日び珍しいくらいの青春ど真中な清々しいまでの
文科省推薦的教育映画でした。

本作のメッセージはやりすぎなくらいにシンプルでストレートです。
「言葉には魂が宿っている。発した言葉はきっと誰かに届く」
最初は何気なく入り込んだ閉鎖した喫茶店からのミニFMにのせて思わぬ人に声が届き
最後は歌に乗せて声を届けるという
滅茶苦茶ベタですがベタで正攻法な話だからこそ綺麗に纏めるのは難しい。
アニメプロデューサーでもある石川学氏が書いた脚本は起承転結が明確で
構成のお手本のような作りです。

ただ、正直個人的にはこういう話は実写で観たかったかなと。
日本の実写界では難しいファンタジー要素とかSF要素ないですし
カメラワークの点でいってもアニメならではの空間の制限のなさをあまり感じなかったからです。

クライマックスの歌唱シーンでアニメ3DCG特有の寄っていく動きがありましたが
それ以外についてる動きがほぼ実写でいうところのパンニング/ドリー/クレーンの動きと同じでした。
実写を意識した演出を心がけたんだと思いますし
私個人は実写を意識した演出のアニメ結構好きなんですけどね。

とか言っておきながらキャラクター面で実写に実際落とし込むのに難しいと思う要素もありました。
それが、なぎさの常軌を逸したイイ子ちゃんぶりであれは生身の人間が演じたら
サイコパスがキ○ガイにしかみえないかも。
彼女はあくまでもみんなに言葉の持ってる力を実感してもらうための
善意を体現した存在みたいなものなので無かったら成立しないし。

あと、全体的に感情表現が過剰に感じられる部分が多くノイズに感じました。
私以前から書いてますが芝居がかった芝居が非常に苦手でして
アニメと時代劇についてはある程度許容されるとも思ってるんですが
それにしてもちょっと登場人物が泣くシーンが多すぎるように感じました。
昔ならっていた脚本家の先生が「観客を泣かせるためにむやみに登場人物を泣かせるな」
みたいなことを言っていたのを思い出しましたね。

というわけで、素晴らしい!完璧!
とまではいいませんが誰でも安心して見られる作りになっている
中々の良作だとは思いますので大変お勧めです。
この出来なのに興行的に苦戦しているのが大変おしいのでぜひ。 

岩井俊二が偉大すぎた。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』

■個人的評価 60/100

あらすじ
とある海辺の町の夏休み。
中学生たちは花火大会を前に「花火は横から見たら丸いのか?平たいのか?」という話題で盛り上がっていた。
そんな中、クラスのアイドル的存在のなずなが、母親の再婚のため転校することになった。
なずなに思いを寄せる典道は、転校をしたくないなずなから「かけおち」に誘われ、時間が巻き戻る不思議な体験をする。

2017打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?


私が初めて観た岩井監督の映画は『Love Letter』でした。
それから夢中になり『四月物語』を観て「この人なんかおかしいんじゃないか?」と感じ
『リリイ・シュシュのすべて』を観て「この人やっぱおかしいは」と感じ
『花とアリス』を観て「この人ロリコン?」と感じ
本作の原作である『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を観て
「あ、この人完全にロリコンだわ」と納得したものです。

もともと『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は1993年に放送されていた『if もしも』
というオムニバスドラマの1編として放送されたものをキネコして1995年に劇場公開したものでした。

この時代1995年には3CCDを搭載した高画質DVカム、VX1000が登場した頃で
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』も業務用DVカムの、のっぺりした画面に
色調補正を加えてフィルムライクな画面にしたものをキネコしてフィルム上映しているので
現在へと続くデジタルシネマの先駆け的作品と言えるかもしれません。

VX1000の登場は相当に衝撃的だったらしく、私が映像を学び出した2010年ごろ
まだその後継のVX2000を使っている人もいたくらいでした。
その当時でもかなり時代遅れでしたけど。
またVXシリーズの後にパナソニックが出したDVX100シリーズは
DVカムなのにフィルムと同じ24フレームでプログレッシブ収録ができるという優れ物で
2000年代前半のDVDスルーみたいな低予算映画に良く使われていたようでした。

などと内容とあまり関係ないことは置いておいて
本作観終わったあとに浮かんできた感想はただ一つ
「岩井俊二版のオリジナルって本当に完成度高かったんだなあ」
ということでした。

本作はキャラ設定をオリジナルからかなり改変しているのですが
最も大きい部分は主要人物が皆、小学生から中学生になっているということではないかと思います。
個人的にはこの設定の改変があまり上手くいってない気がするんですよ。
主に2つの理由で。

物語の転換になるきっかけは「打ち上げ花火を横からみたら平べったく見えるのか?」
という少年たちの素朴な疑問にあります。
いくらなんでも中学生にもなったら花火を上からみたら平べったく見えるんじゃないか
なんていう馬鹿げた疑問は持たないんじゃないですかね?
だって花火の火花は放射線状に広がるんですよ?

もう1つがオリジナルにあった岩井監督の変態的なフェティシズムが改変によって薄れている
という点です。
広瀬すずさんが声をあてているなずなですが、
オリジナルでは当時13歳だか14歳だったかくらいの奥菜恵さんが演じていました。
社会的に十分子供の年齢ですが外見は大人と子供の間にあるような
絶妙な造形の被写体のうなじやふくらはぎを執拗に狙う変態的なフェティシズムに
オリジナルは溢れており、さらに小学生という設定年齢が危うさを倍増させていました。
本作ではアニメのキャラになって肉感がなくなった上に年齢も上がって
オリジナルの持っていた最大の危うい魅力が限りなく薄れてしまったように感じました。

あと、脚色にあたって終盤の展開が大きく変わっていますが
私としては何がしたかったのかちょっとよくわからなかったです。

とか悪口ばかり言ってしまっているようですが
少なくても観ていて苦痛とかはなかったですし、序盤から中盤にかけては
空気感を今の時代に再現できていたように感じましたので特に悪感情とかはありません。

それより、ほとんど何も共通点のない『君の名は。』と無理やりリンクさせるような
宣伝の方法は、そういうの期待して観に行ったお客さんもがっかりするし
そういう方が増えると作品の評判も落ちてしまい誰も得しないのでやめていただきたかったです。
 

日本のTVドラマはなぜ安っぽく見えてしまうのか?


一昨日のことですがデーブ・スペクターさんが以下のような発言をし物議を醸しています。



デーブ・スペクターさんは過去にもTV番組で以下のような発言をしていますので
日本のTVドラマのクオリティについては一家言あるようです。

ドラマ低迷、デーブが直言 「日本の俳優演技ヘタ、自覚がない!」
http://www.j-cast.com/2009/07/09045046.html?p=all

日本のドラマのクオリティをどうとらえるかは人それぞれだと思いますが
番組のクオリティに手厳しい意見を持っている方は多いようで
"日本 テレビドラマ つまらない"で検索すると
似たようなテーマのスレッドやブログ記事が大量にヒットします。

内容を見ると総じて「演技が下手」「安っぽく見える」
という意見が多いようです。
というわけで今日は何で日本のTVドラマが安っぽく見えてしまうのか
映像面とそれ以外の面から私見を書いてみます。
 
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実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』と原作の相違点。


■個人的評価 68/100
ゴースト・イン・ザ・シェル
原作から哲学的要素を消し去った分かり易いSFアクション映画。

■あらすじ

世界でただ一人、脳以外は全身義体の世界最強の少佐(スカーレット・ヨハンソン)率いるエリート捜査組織公安9課は、
ハンカ・ロボティックスの推し進めるサイバー・テクノロジーを狙うサイバーテロ組織と対峙。
しかし、捜査を進めるうちに事件は少佐の脳に僅かに残された過去の記憶へと繋がり、
彼女の隠された過去を呼び覚ますのだった。
「私は誰だったのか……」やがて、彼女の存在をも揺るがす衝撃の展開へと発展していく……。

※タイトルを読めば予想つくかと思いますが本作及びオリジナル作品と
攻殻機動隊シリーズのネタばれがあるのでご注意ください。

 
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極私的 2016年公開映画ワースト10

昨日予告した通り今日はワースト10です。

 
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2016年公開映画 私的ベスト20

大変お久しぶりです。

もといあけましておめでとうございます。
もう2月ですがとりあえずこれはやっておかないとということで
すごい今更ですがベストワーストの記事を書きます。
 
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君の名は。—感想・レビュー

■個人的評価 92(50)/100
君の名は。1
凄い!そしてキモい!!

自主制作アニメ界の大物として知ってる人はすごく知ってる。
知らない人は全く知らない新海誠監督の最新作です。

劇場は大変な入りでして平日の夜だというのに客席はほぼ埋まっていました。

そもそもこの人の映画はガラガラのくらーいミニシアター私みたいなオタクたちが
気配を殺し合って観るもの
だと思っていたのでこれには驚きました。

いやー変われば変わるものなんですねー。

今回は少しネタバレありで書くのでご注意を。
 
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青空エール—感想・レビュー

■個人的評価 10/100
青空エール1
登場人物のことを誰一人として好きになれない。


恥ずかしい…。何もかもが恥ずかしい…。
恥ずかしくて画面から目を背けそうになった回数数えきれず。
苦痛からの解放までに時計を見た回数数えきれず。

三木監督の前作『くちびるに歌を』が最高だったので
青春映画+音楽で外れなしと期待したのが大きな間違いでした。
人気コミックの映像化ということですが原作は全く読んだ事がありません。
ですのでこれから書くことは原作との比較ではなく完全に1本の映画としてみた感想です。
あと点数からお察しの通り、良い事は全くと言っていいほど書いてないので
好きな方はブラウザを閉じるなり、訳の分らんブロガーの戯言と笑い飛ばすなりしてください。
いつもはネタばれ無しで書いてますが
ディテールを書かないとただの言いっぱなしの悪口になってしまうので
今回はネタばれありで書きます。 
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